最高裁判所第一小法廷 昭和40年(行ツ)63号 判決 1967年4月13日
上告人 大分県知事 外五名
被上告人 有馬正純
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。
理由
上告人金高ユミ、同金高フサヨ、同金高新、同金高信一、同河野ナツコの代理人宮川仁名義の上告理由第一点について。
町村制の下において村が知事の許可なくして行なつた基本財産の処分行為も、地方自治法の施行と同時に同法附則一一条により、完全にその効力を生ずるに至つたとした原審の判断は正当である。所論は、右と異なる独自の法律上の見解に立つて、原判決の違法をいうものであつて、採るを得ない。
同第二点について。
原審の確定した事実関係、ことに本件買収・売渡処分の経緯に徴すれば、本件土地の所有権取得に関し、上告人らの所有と信ずるにつき過失がなかつたとは認められないとして取得時効の主張を排斥した原審の判断は是認できる。原判決には所論の違法は認められず、趣旨は、理由がない。
同第三点について。
自作農創設特別措置法四〇条ノ二に基づく牧野の買収処分により国が所有権を取得した場合において、その所有権の取得およびその後の所有権の取得については、民法一七七条の適用があると解すべきであり、右と異なる判断を示した原判決の判示は、法令の適用を誤つたといわなければならない。しかし、原審の適法に判断したところによれば、本件土地の買収処分は当然無効であるというのであるから、右土地の売渡しを受けた上告人知事を除くその余の上告人らは、登記の欠缺を主張するにつき正当の利益を有する第三者には該当しないものというべく、従つて、本件においては、民法一七七条の適用を問題にする余地はない。それ故、論旨は、結局、判決に影響を及ぼすことのない法令違反の主張たるに帰し、採るを得ない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判官 入江俊郎 長部謹吾 松田二郎 岩田誠 大遇健一郎)
上告人代理人の上告理由<省略>